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トランペットの演奏に腹筋を鍛える必要はあるのか
ありません。以上。
……では記事になりませんのでもうちょっと書こうと思います(笑)
吹奏楽部の先生が生徒に対して腹筋を鍛えるトレーニングをさせるという話は大昔のもので、近年ではさすがにやらせているところは無いだろうと思っていましたが、最近生徒さんで腹筋トレーニングをやらされているという子がいたので驚いてしまいました。
大事なことなのでもう一度書きます。
トランペットを演奏するのに腹筋を鍛える必要はありません。
僕はトランペット以外の楽器を演奏できいないので確かなことは言えないのですが、恐らくは他の管楽器でも同様のことが当てはまるかと思います。
今回の記事は迷信じみたトレーニングを生徒に課すようなごく一部の(と思いたい)吹奏楽部の先生にこそ読んで頂きたい記事です。
腹筋は必要ないのか
ここまで書いたことをさらっと読んだだけだと「トランペットの演奏に腹筋は使わない」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、決してそういうわけではありません。
トランペットの演奏のためにわざわざ腹筋をトレーニングしてまで鍛える必要はないという意味です。
ここは非常に重要ですので勘違いしないよう注意してください。
なぜトレーニングは必要ないのか
トランペットの演奏とブレスでも書いた通り、トランペットをなるべく自由に演奏するためにはリラックスしてたっぷりとブレスすることが重要です。
いきなりですが、わさびのチューブを思い浮かべてください。
仮に1センチだけわさびを出したいとします。
もしそのわさびが開封したてで中身が詰まっている状態であればチューブを軽く押しただけで必要な量を出すことができるはずです。
一方中身が少ない状態であったら1センチ出すだけでも少し強めに押し出してやる必要があります。
トランペットの場合も同じことが言えます。
すなわちたっぷりと息を吸った状態が中身の詰まったチューブ、ブレスが不十分な状態が中身の少ないチューブです。
「トランペットを吹くために腹筋を鍛える」というのは中身の少ないわさびのチューブを頑張って絞ろうねと言っているのと変わりありません。
これはもともと空気を吸う量が小さいことによって起こる様々な問題を対症療法的にごまかす手段でしかありません。
そもそもチューブの中身が少ないのですから、もし仮に極限まで腹筋を鍛えたとしてもあっという間に中身(=空気)が無くなり、限界が訪れます。
ですからトランペットの演奏のためには、まずしっかりとブレスしようという話になるのです。
しっかりとブレスできている状態は体の中の圧力が比較的高い状態です。
この状態であれば意識して腹筋を使って空気を押し出さなくともトランペットを吹くのに必要な量の空気は出て行きますし、もし空気が少なくなったらその時点でほんの少しだけ腹筋でサポートすればいいのです。
そして以下に書くことを防ぐために、あまりにも空気が足りない状態に陥る前に再び大きくブレスを取るのです。
腹筋やその他の筋肉に必要以上に頼ることのデメリット
先ほどわさびのチューブの例を出しましたが、トランペットを演奏するときに腹筋やその他の筋肉も含めて必要以上に力むことは以下の4つのデメリットしか生みません。
音色が硬くなる
バテやすくなる
音をコントロールしづらくなる
高い音が出づらくなる
いかがでしょう?たったの4つだけです。
トランペットプレイヤーにとっては致命的ですね(笑)
細かいことを書き出すとあまりに長くなりすぎるので割愛しますが、これを実感したければ小さめのブレスをしてお腹や上半身に目一杯力を入れて歌ってみましょう。
この状態でオペラ歌手のようによく響く伸びやかな歌声を出す事はできるでしょうか?
腹筋のトレーニングが不要ならどうすれば
簡単です。これまで筋トレをしていた時間を使って普段からトランペットを吹く練習をしましょう。
特にウォームアップに費やすと良いでしょう。
唇のコンディションをうまく保つためにはに書いた内容が参考になるかと思います。
ただしこのページのメニューをやりましょうということではなく、このキモに則ってやるならば大体どんなメニューでも良いウォームアップになります。
コンクールが近くなってくるとパート練やら合奏やらにやたらと時間をかけたくなるかもしれませんが、生徒たちを楽譜をきっちりと再生させるだけのマシーンに仕立てたいのならとても有効な手段と言えるでしょう。
マシーンによる楽譜の再生ではなく音楽を演奏するためには、まずおのおのの楽器を思ったようにコントロールできるようにし、そして彼らの頭の中に世界観を描いてやることが重要です。
こういったことに必要不可欠な第一歩をより着実に身につけさせるためにウォームアップに時間を割くべきであると僕は思います。
日本の吹奏楽部での管楽器教育=ガラパゴスであるということ
近年ではかなり改善されてきたものと思っていたのですが、やはり一部ではまだまだ迷信じみた教育方法が根強いところもあるようです。
腹筋のトレーニングをする以外にも
練習の前に走りこみ
机の上に置いたトランペットを吹くことができる
反響が無いからという理由での屋外での練習
曲の一部分を音程が合うまでずーっとロングトーン
どれも全く無意味とは言いがたいのですが・・・まあほぼ無意味です(笑)
そのうちこれら一つずつをピックアップして突っ込んでいっても面白いかもしれませんね。
今書くことができるのは吹奏楽部や楽団の指導者が上に挙げたようなことばかりやらせるのなら疑問を持ってみるべきだということです。
関連:トランペットにまつわる迷信について