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魅惑のビンテージトランペット



先日の記事で取り上げたマーティン ハンドクラフトコミッティですが、実を言えばebayをなんとなく巡回していた時に見つけ、あまりのお買い得感にパクっと飛びついてしまったシロモノでした。

以前中古トランペットに関して書いたとき、ebayで海外からトランペット本体を買うのはおすすめしないと書いたはずなのですが……

 

今回は運よくプレイヤーの方が出品されており、結果的に良いコンディションだったのでOKですが、一般の方にはとてもおすすめできる方法ではありません。念のため。

 

さてそんなビンテージトランペットですが、そもそもビンテージトランペットの何が良いのでしょうか?

特にジャズを演奏される方がその魅力に取りつかれやすいと思うのですが(多分)、そんな魅力に憑りつかれてしまい、日夜ヤフオク!とebayと楽器屋さんへの巡回が止まらないという同志のための案内となればいいと思って今回の記事を書いてみようと思います。

関連1:ジャズトランペットの伝説的存在、Martin Committee

関連2:伝説の陰に隠れた名品 Martin Handcraft Committee

 

 

ビンテージトランペットの良さ


ビンテージトランペットにはその時代を感じさせる音色の良さがあります(もちろんその個体の状態にもよりますが)。

なんとも言えない枯れた感じだったり、ちょっとしたジャズっぽいニュアンスを付けたときの反応の良さなんかは現代のトランペットで真似をするのは、無理ではないにしろちょっと難しいだろうなと感じてしまいます。

現代の一流ジャズプレイヤーのなかにもアンブローズアキンムシアやトムハレルなど、ビンテージにこだわって演奏するプレイヤーは少なくないのですが、その理由も分かるような気がします。

 

あとちょっとボロっとした見た目が単純にかっこ良かったりもしますよね(笑)

個人的にはあまり賛同できませんが、憧れのトランペッターと同じトランペットを使えるのが良いんだという方もいるでしょう。

 

 

注意すべき点


ビンテージトランペットには様々な注意すべき点があるのも事実です。

しかも大抵のものは後から修復することが不可能か、非常に困難なものが多いため、楽器選びには細心の注意が必要です。

 

1.ピストンのスムーズさ、気密性


演奏中にピストンが引っかかってしまうのは非常に大きなストレスとなります。

オイルの種類を変えたり、楽器屋さんである程度は調整することが可能ですが、ピストンの偏摩耗が激しい場合などはどうしても直らないことがあります。

またピストンの気密性があまりにも抜けていると、音のツボがぼんやりするという感じの演奏しづらさを感じる原因ともなります。

こちらもビンテージ用のオイルを使用することで少しは改善しますが、限界はあります。

 

2.管体のダメージ


ダメージというと見た目にわかるようなへこみやその修復跡もそうですが、トランペットの材料である真鍮は長年の使用により変質、摩耗します。

特に指の触れやすい部分などは管が薄くなって穴が開きそうになっていたり、金属のパッチが貼られていることもあります。

穴が空いていてはまずいのは誰でも理解できるかと思いますが、パッチが当てられているものも管体の振動に悪影響を及ぼすとされ、注意が必要です。

一応、僕自身はパッチが2か所も当てられているシルキーやケノンを使ったりしますが……

 

また、そこそこお高い値段で売られていたビンテージトランペットを試奏させていただいた時には、抜き差し管を抜いてチェックしてみたら管のはじっこが劣化してギザギザボロボロになっていたこともありました。

こうなってしまうともはや抜き差し管の交換以外の手段はないと思われますが、その部品も入手困難なことがほとんどです。

 

3.音程


ビンテージトランペットには音程に難のあるものが多い気がします

特にトランペットの場合、音程を後で調整して直すというのは難しいようですので、我慢するか諦めて他の個体を探すかということになりそうです。

 

音程の良し悪しなんて僕にはよく分からないから大丈夫だよ!(笑)なんて方もいるかもしれません。

しかしいろんな方にレッスンを行っていて気付いたのですが、意外と音程を気づいていないようでいながら無意識に感知している人は結構多いような気がします。

楽器のせいで音程が悪いのに、それを無意識に補正しようとして結局奏法に無理が出たり、演奏の流れに滞りが生じている例は実は結構多かったりするんです。

ですからたとえあなたが音程を気にしないし、感じ取ることもできないと思っていたとしても、一定以上の音程の正確さは必要と考えるべきでしょう。

 

結局合理的なのは現代のトランペットだが


というわけでビンテージトランペットを選ぶうえで注意する点は細かいものも含めれば上記3点以外にもまだ存在しますが、この3点を満たす個体を探すだけでもまあまあ苦労するはずです。

しかも現実はそれらを満たしたうえで予算以内で、なおかつお目当ての年代の特定の機種を購入するわけですから、まさにビンテージトランペットとの出会いは偶然、もしくは運命的なものがあると言っても良いかもしれません(笑)

 

そもそも単にトランペットという楽器としてなら現代の楽器の方が優れている点は多いと思います。

ですから初心者の方が上達するためであれば、現代の楽器の中から選ぶ方が合理的であるということには、さほどの異論は出ないかと思います。

 

トランペットの演奏は所詮"お遊び"であるということ


しかし多くの方にとってトランペットを演奏するという行為は趣味、言ってしまえば"お遊び"であるとも言えます。

こんな言い方をするとトランペットの演奏は芸術であるという崇高さを汚されたような気がする方もいらっしゃるかもしれません。

しかしそんな方には"たかがお遊び"のメンタリティから芸術に必要不可欠である柔軟な創造性が生まれることを忘れないでいただきたいものです。

 

ビンテージトランペットを探して購入し、演奏するということに関しては、ここまでご紹介した通り結局難点が多いのは事実です。

しかし理屈抜きで感情に直接訴えかける音色や、様々な理由による思い入れのある楽器で音楽を演奏できることはあなたの創造力をブーストさせることに繋がるのではないかと僕は思います。

 

逆を考えてみましょう。

僕自身経験がありますが、どんなに優れた楽器であってもプレイしていて心が躍らないときの演奏はえてして説得力がなく、下手をすれば悲惨なものです。

 

ですから素直にトランペットを楽しむためにも、そして素晴らしい芸術のためにもプレイしていて心が躍るトランペットを演奏しましょう。

そしてその選択肢としてもしビンテージトランペットが浮上してきた場合、ここまで書いたように数多くの難点があるのは事実ですから、それらをよく理解して選ぶようにしていただければと思います。

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