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伝説の陰に隠れた名品 Martin Handcraft Committee
マーティンという管楽器メーカーが世に放った名作、コミッティは前回ご紹介したようにジャズのレジェンド達によって支持され、その結果としてこの楽器自身もジャズトランペットのレジェンドとして名を残すこととなりました。
今回取り上げるのは、コミッティはコミッティでもハンドクラフトと名の付くモデルについてです。
正直言ってこのハンドクラフトコミッティについては、コミッティほどの知名度はありません。
しかし一部のマニアからは幻のようなトランペットと目されているらしく、たまたま実物を入手してしまった僕としてはこのハンドクラフトコミッティの魅力についても書いておくべきかと思い、この記事を書くこととしました。
ハンドクラフトコミッティは1939年から発売され、このトレントオースティンの動画によれば4年ほどしか製造されなかったようです。
有名な方のコミッティと比べると、まずハンドクラフトの方が発売され、その後にコミッティが出たという流れのようです。
僕の持っている個体は138xxx番台ですから1940年製造のようです。
ハンドクラフトコミッティの短命さは恐らく、コミッティが当時のジャズミュージシャンから爆発的に支持されたことによってハンドクラフトの存在意義が微妙になってしまったのかなと推測しています。
昔のジャズトランペッターのアルバムジャケットを見てみれば分かりますが、コミッティを愛用しているプレイヤーは本当に多かったですからね。
一方ハンドクラフトコミッティを愛用しているプレイヤーは、過去現在含めてもクリスボッティくらいしか知りません。
ハンドクラフトに限らず、コミッティシリーズには以下のように3つのボアサイズが存在しました。
#1 .445 Sボア
#2 .451 Mボア(ステップボア)
#3 .468 XLボア(ステップボア)
※ボアサイズは2番抜き差し管上部に小さく刻印されており、#2は★マークで代用されることもあり。
この3つ以外に.460 MLボアのモデルも非常に少数ですが生産されたようです。
またハンドクラフトもコミッティも#3が最も音色が良く、個体数も少ないとされており、クリスボッティが使用しているものも♯3です。
一方、現在のハンドクラフトコミッティの流通量はネットオークションなどに目を通す限り#2が最も多そうです。
左がハンドクラフトコミッティ、右がコミッティです。
まずは見た目からいくと、コミッティらしからぬ通常タイプのウォーターキイが目につきます。通常タイプなのが”特徴”というのはなんだかアレな気もしますが(笑)
のべ座の形なんかも全く違いますね。
ところどころニッケルトリムが目立つ点はコミッティデラックスのような印象を受けます。
またベルのフレア具合はそんなに違わないような気がします。
次にコミッティと同様のリバース式メインスライド、そしてメインスライドの内側には金属板が張り付けられています。
楽器の振動を逃がしにくくするために後から鉛板などを貼るチューンナップは聞いたことがありますが、ノーマルの時からすでに貼られているものは非常に珍しいです。
3番スライドのストッパーがないのもコミッティと同様。
またトリガーはコミッティのようなオフセットタイプではないものの、ネジが横を向く、ビンテージトランペットにありがちなスタイル。
ちなみにこのトリガー自体は恐らく純正ではなさそうです。
実際に量ってみるとコミッティ(上画像)が1027gなのに対し、ハンドクラフトコミッティ(下画像)は936gしかありませんでした。
例えばうちにあるシルキーB5 GPが1011g、ヤマハYTR-8335Gが1079gでしたからハンドクラフトコミッティの軽さは際立ちます。
一方でコミッティは通常のトランペットとさほど変わりのない重量なのですが、実際手にしてみると変な持ち重りがします。
実はコミッティの抜き差し管の断面を見ると、ヤマハやバックに比べて薄い管で構成されていることがよく分かります。
これとあわせて考えると、恐らくコミッティはベルが肉厚に設計されているのではないかと思います。
同じシリーズのトランペットですから、コミッティと同様スモーキーで暖かく、ダークな音色という傾向は変わりません。
しかしコミッティのような金属的な音の芯はあまりなく、少し軽めで太く、ザラつき傾向がより強まった感じです。
金管楽器なのにもかかわらず、木質的な印象さえ受ける音色です。
しかしながら高音域を出そうとするとコミッティと同様に、ダークで肉感のある響きが目立つようになります。
一言でいうならばより音が太くてよりスモーキーなコミッティ、というのがハンドクラフトコミッティの特徴って感じでしょうか。
ベルの大きさとフレア具合の差が分かりやすいように他のトランペットと並べてみました。
何かの参考にどうぞ。
機種は左から、バック ストラディバリウス180ML SP、マーティン ハンドクラフトコミッティ、ヤマハ YTR-8335G、マーティン コミッティ、シルキー B5 SP
シルキーからハンドクラフトコミッティのインスパイアモデルとしてHCシリーズが販売されています。
このシリーズはイエローブラスベルのHC-1とコパーブラスベルのHC-2によって構成されており、コミッティの#3ボアと同じく.468XLステップボアを採用しています。
実は僕の生徒さんで複数の方がこれを持っており、以前試奏させていただいたことが僕がハンドクラフトコミッティに興味を持つきっかけになったのですが。
HCシリーズの吹奏感がハンドクラフトコミッティと似ているかと問われると、正直言って別物であると思います。
ハンドクラフトコミッティをはるかに超えるレスポンスの良さに澄み渡った音色、そしてピストンのアクションは抜群ですからハンドクラフトコミッティとはある意味で比べ物になりません。
ただし、ハンドクラフトコミッティに似たダークで太く、ウッディなサウンドのトランペットという点ではわざわざ"ハンドクラフト"と名乗るだけはあるなと実感することができると思います。
今回取り上げるのは、コミッティはコミッティでもハンドクラフトと名の付くモデルについてです。
正直言ってこのハンドクラフトコミッティについては、コミッティほどの知名度はありません。
しかし一部のマニアからは幻のようなトランペットと目されているらしく、たまたま実物を入手してしまった僕としてはこのハンドクラフトコミッティの魅力についても書いておくべきかと思い、この記事を書くこととしました。
ハンドクラフトコミッティの歴史
ハンドクラフトコミッティは1939年から発売され、このトレントオースティンの動画によれば4年ほどしか製造されなかったようです。
有名な方のコミッティと比べると、まずハンドクラフトの方が発売され、その後にコミッティが出たという流れのようです。
僕の持っている個体は138xxx番台ですから1940年製造のようです。
ハンドクラフトコミッティの短命さは恐らく、コミッティが当時のジャズミュージシャンから爆発的に支持されたことによってハンドクラフトの存在意義が微妙になってしまったのかなと推測しています。
昔のジャズトランペッターのアルバムジャケットを見てみれば分かりますが、コミッティを愛用しているプレイヤーは本当に多かったですからね。
一方ハンドクラフトコミッティを愛用しているプレイヤーは、過去現在含めてもクリスボッティくらいしか知りません。
コミッティシリーズのボアサイズに関して
ハンドクラフトに限らず、コミッティシリーズには以下のように3つのボアサイズが存在しました。
#1 .445 Sボア
#2 .451 Mボア(ステップボア)
#3 .468 XLボア(ステップボア)
※ボアサイズは2番抜き差し管上部に小さく刻印されており、#2は★マークで代用されることもあり。
この3つ以外に.460 MLボアのモデルも非常に少数ですが生産されたようです。
またハンドクラフトもコミッティも#3が最も音色が良く、個体数も少ないとされており、クリスボッティが使用しているものも♯3です。
一方、現在のハンドクラフトコミッティの流通量はネットオークションなどに目を通す限り#2が最も多そうです。
ハンドクラフトコミッティの特徴
外観
左がハンドクラフトコミッティ、右がコミッティです。
まずは見た目からいくと、コミッティらしからぬ通常タイプのウォーターキイが目につきます。通常タイプなのが”特徴”というのはなんだかアレな気もしますが(笑)
のべ座の形なんかも全く違いますね。
ところどころニッケルトリムが目立つ点はコミッティデラックスのような印象を受けます。
またベルのフレア具合はそんなに違わないような気がします。
次にコミッティと同様のリバース式メインスライド、そしてメインスライドの内側には金属板が張り付けられています。
楽器の振動を逃がしにくくするために後から鉛板などを貼るチューンナップは聞いたことがありますが、ノーマルの時からすでに貼られているものは非常に珍しいです。
3番スライドのストッパーがないのもコミッティと同様。
またトリガーはコミッティのようなオフセットタイプではないものの、ネジが横を向く、ビンテージトランペットにありがちなスタイル。
ちなみにこのトリガー自体は恐らく純正ではなさそうです。
重量
実際に量ってみるとコミッティ(上画像)が1027gなのに対し、ハンドクラフトコミッティ(下画像)は936gしかありませんでした。
例えばうちにあるシルキーB5 GPが1011g、ヤマハYTR-8335Gが1079gでしたからハンドクラフトコミッティの軽さは際立ちます。
一方でコミッティは通常のトランペットとさほど変わりのない重量なのですが、実際手にしてみると変な持ち重りがします。
実はコミッティの抜き差し管の断面を見ると、ヤマハやバックに比べて薄い管で構成されていることがよく分かります。
これとあわせて考えると、恐らくコミッティはベルが肉厚に設計されているのではないかと思います。
演奏してみた感じ
同じシリーズのトランペットですから、コミッティと同様スモーキーで暖かく、ダークな音色という傾向は変わりません。
しかしコミッティのような金属的な音の芯はあまりなく、少し軽めで太く、ザラつき傾向がより強まった感じです。
金管楽器なのにもかかわらず、木質的な印象さえ受ける音色です。
しかしながら高音域を出そうとするとコミッティと同様に、ダークで肉感のある響きが目立つようになります。
一言でいうならばより音が太くてよりスモーキーなコミッティ、というのがハンドクラフトコミッティの特徴って感じでしょうか。
他のトランペットとの比較
ベルの大きさとフレア具合の差が分かりやすいように他のトランペットと並べてみました。
何かの参考にどうぞ。
機種は左から、バック ストラディバリウス180ML SP、マーティン ハンドクラフトコミッティ、ヤマハ YTR-8335G、マーティン コミッティ、シルキー B5 SP
唯一のインスパイアモデル
シルキーからハンドクラフトコミッティのインスパイアモデルとしてHCシリーズが販売されています。
このシリーズはイエローブラスベルのHC-1とコパーブラスベルのHC-2によって構成されており、コミッティの#3ボアと同じく.468XLステップボアを採用しています。
実は僕の生徒さんで複数の方がこれを持っており、以前試奏させていただいたことが僕がハンドクラフトコミッティに興味を持つきっかけになったのですが。
HCシリーズの吹奏感がハンドクラフトコミッティと似ているかと問われると、正直言って別物であると思います。
ハンドクラフトコミッティをはるかに超えるレスポンスの良さに澄み渡った音色、そしてピストンのアクションは抜群ですからハンドクラフトコミッティとはある意味で比べ物になりません。
ただし、ハンドクラフトコミッティに似たダークで太く、ウッディなサウンドのトランペットという点ではわざわざ"ハンドクラフト"と名乗るだけはあるなと実感することができると思います。