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ジャズトランペットの伝説的存在、Martin Committee
マーティンコミッティ。
ジャズトランペットを少しかじったことのある方なら誰しもが耳にしたことがある名前です。
マイルス・デイヴィスをはじめ、ケニー・ドーハム、ブルー・ミッチェル、ディジー・ガレスピーなど、ジャズトランペットの伝説的プレイヤー達がこぞって使用した楽器のことで、恐らくジャズトランペットの歴史の中で最も名高い、名器中の名器と言うことができるでしょう。
マーティン社は当時、このコミッティシリーズを開発するにあたってレナルド・シルキー(もちろん現在のシルキー創業者)、ヴィンセント・バック(同じくバック創業者)、エルデン・ベンジ(同じくベンジ創業者)、フォスター・レイノルズ(くどいようですがF.A.レイノルズ創業者)らからの意見を取り入れたことが、コミッティという名の由来といわれています。
まあ実質的にはこの中でほとんどシルキーが関与していたんじゃないかという話もありますが、その辺が気になる方はこちらで読んでみてください。https://reverb.com/news/a-brief-history-of-the-martin-committee-trumpet
それはともかく、他のトランペットとは異なる恵まれた(?)生い立ちをもつマーティンコミッティですが、コミッティと呼ばれるトランペットの中にもいくつかの種類があることをご存じでしょうか?
マーティン社から発売されたトランペットでコミッティの名を冠するものは、僕の知る限りではコミッティ、そしてコミッティに洋白パーツを多用したような見た目のデラックス、そしてコミッティ以前に発売されたハンドクラフトコミッティの3種類です。
そのうち僕の手元にあるのはコミッティとハンドクラフトコミッティの2つですが、今回は比較的有名なコミッティの方からご紹介していこうと思います。
関連:伝説の陰に隠れた名品 Martin Handcraft Committee
外見的な特徴で言えばこの独特な形状のウォーターキイが目を惹くかと思います。
それからオフセットされた3番トリガー、独特のテーパーを持つベル、またリバース式のメインスライドなんかはシルキーにも似ていると思われる方が多いかもしれませんが、実はピストン内部の構造も現在のシルキーに少し似ていたりします。
まあ見れば誰でもわかるような外見的な特徴はさておき、演奏しなければ分からない、楽器としての面ではどのような特徴があるのでしょうか。
マーティンコミッティ最大の特徴は表現の多彩さであると僕は思います。
息の吹き込み具合によってできるメリハリの幅が他のトランペットに比べて非常に広く、特にコンボ編成でジャズを演奏するのにうってつけだと思います。
特にアドリブ中に高い音を吹くときには、他のトランペットでは絶対に出すことのできない、人の声で叫ぶような生々しさが際立つようになります。
現代の一般的なトランペットであればパーンと素直に遠鳴りしそうなものなのですが、恐らくそういったシチュエーションにおいては他とは異なる一部の周波数のみが突出するようになるのでしょう。
こういった音色の変化は他のトランペットではあまり見られない独特なものです。
ちなみにもともとコミッティは特にジャズ向けとして売り出されたわけではないそうです。
なのでしっかりシンフォニックな音を意識して演奏すれば、それっぽい音色を出すことも一応可能ではあります。
音色の傾向としては全体的にスモーキーで暖かく、明るさで言うならばダーク寄りです。
特にコミッティは小さめの音量から個性的なずしっとした金属的な音の芯が見え始める感じがします。
一方ホーンセクションとして演奏する場合は他のトランペットの音とブレンドしづらいと言われます。
もともとビンテージですし、個体差も大きいというのもあるのでしょうが、今回いろいろと調べてみてもコミッティは音程が良くないとか、音のツボがルーズだという記述が目立ちました。
実際に僕がお借りしているコミッティもお世辞には音程が良いとは言うことができません。
音程が良くないということは逆の言い方をすれば、ある特定の音を出すときに狙ったポイントから少しずれた場所にツボがあるということですから、ちゃんと演奏しようとすると意外と大きなストレスを感じるものです。
ジャズトランペットの世界ではダントツの人気を誇る機種だけに、復刻版が発売されたことがありました。
ホルトンから(のちにコーン・セルマーに買収される)70年代から00年代にわたって発売されたものがそれで、黒や赤など様々な色のラッカーが施されてするものも存在します。
その中でもピストンのストロークが通常のトランペットより少し長いロングストロークと通常のものに近いショートストロークモデルがあったりしたのは意外と知られていないことだそうです。
僕も試奏したことがありますが(どのモデルだったか忘れてしまいましたが)、トランペットとしては恐らくビンテージのコミッティよりか優秀な楽器だという印象を受けました。
音程もかなりマシですし、やろうと思えば若干無理はあるものの、シンフォニックな音もそれなりに出ます。
音色はビンテージコミッティよりもさらにダークさに磨きがかかっており、おそらくコミッティを復刻したというよりはマイルスのサウンドを復刻したと表現したほうが近いかもしれません。
他にも今は亡きカンスタルからは1603、1603+が、アダムスからはA9というインスパイアモデルが販売されています(カンスタルの方はもう新品では入手不可能かと思いますが)。
また近年ではマーティン創始者の子孫が新たに立ち上げたMartin Brasswind Companyより復刻版が発売されています。
いずれも僕は実際に演奏したことはありませんが、YouTubeなどでその音を聴く限りは、どれもなかなかの音色をしているように見受けられます。
続き:伝説の陰に隠れた名品 Martin Handcraft Committee
ジャズトランペットを少しかじったことのある方なら誰しもが耳にしたことがある名前です。
マイルス・デイヴィスをはじめ、ケニー・ドーハム、ブルー・ミッチェル、ディジー・ガレスピーなど、ジャズトランペットの伝説的プレイヤー達がこぞって使用した楽器のことで、恐らくジャズトランペットの歴史の中で最も名高い、名器中の名器と言うことができるでしょう。
コミッティ=「委員会」
マーティン社は当時、このコミッティシリーズを開発するにあたってレナルド・シルキー(もちろん現在のシルキー創業者)、ヴィンセント・バック(同じくバック創業者)、エルデン・ベンジ(同じくベンジ創業者)、フォスター・レイノルズ(くどいようですがF.A.レイノルズ創業者)らからの意見を取り入れたことが、コミッティという名の由来といわれています。
まあ実質的にはこの中でほとんどシルキーが関与していたんじゃないかという話もありますが、その辺が気になる方はこちらで読んでみてください。https://reverb.com/news/a-brief-history-of-the-martin-committee-trumpet
それはともかく、他のトランペットとは異なる恵まれた(?)生い立ちをもつマーティンコミッティですが、コミッティと呼ばれるトランペットの中にもいくつかの種類があることをご存じでしょうか?
マーティン社から発売されたトランペットでコミッティの名を冠するものは、僕の知る限りではコミッティ、そしてコミッティに洋白パーツを多用したような見た目のデラックス、そしてコミッティ以前に発売されたハンドクラフトコミッティの3種類です。
そのうち僕の手元にあるのはコミッティとハンドクラフトコミッティの2つですが、今回は比較的有名なコミッティの方からご紹介していこうと思います。
関連:伝説の陰に隠れた名品 Martin Handcraft Committee
マーティンコミッティの特徴
外見的な特徴で言えばこの独特な形状のウォーターキイが目を惹くかと思います。
それからオフセットされた3番トリガー、独特のテーパーを持つベル、またリバース式のメインスライドなんかはシルキーにも似ていると思われる方が多いかもしれませんが、実はピストン内部の構造も現在のシルキーに少し似ていたりします。
まあ見れば誰でもわかるような外見的な特徴はさておき、演奏しなければ分からない、楽器としての面ではどのような特徴があるのでしょうか。
1.表現の多彩さ
マーティンコミッティ最大の特徴は表現の多彩さであると僕は思います。
息の吹き込み具合によってできるメリハリの幅が他のトランペットに比べて非常に広く、特にコンボ編成でジャズを演奏するのにうってつけだと思います。
特にアドリブ中に高い音を吹くときには、他のトランペットでは絶対に出すことのできない、人の声で叫ぶような生々しさが際立つようになります。
現代の一般的なトランペットであればパーンと素直に遠鳴りしそうなものなのですが、恐らくそういったシチュエーションにおいては他とは異なる一部の周波数のみが突出するようになるのでしょう。
こういった音色の変化は他のトランペットではあまり見られない独特なものです。
ちなみにもともとコミッティは特にジャズ向けとして売り出されたわけではないそうです。
なのでしっかりシンフォニックな音を意識して演奏すれば、それっぽい音色を出すことも一応可能ではあります。
2.独特な音色
音色の傾向としては全体的にスモーキーで暖かく、明るさで言うならばダーク寄りです。
特にコミッティは小さめの音量から個性的なずしっとした金属的な音の芯が見え始める感じがします。
一方ホーンセクションとして演奏する場合は他のトランペットの音とブレンドしづらいと言われます。
3.音程が悪い
もともとビンテージですし、個体差も大きいというのもあるのでしょうが、今回いろいろと調べてみてもコミッティは音程が良くないとか、音のツボがルーズだという記述が目立ちました。
実際に僕がお借りしているコミッティもお世辞には音程が良いとは言うことができません。
音程が良くないということは逆の言い方をすれば、ある特定の音を出すときに狙ったポイントから少しずれた場所にツボがあるということですから、ちゃんと演奏しようとすると意外と大きなストレスを感じるものです。
復刻版、インスパイアモデル
ジャズトランペットの世界ではダントツの人気を誇る機種だけに、復刻版が発売されたことがありました。
ホルトンから(のちにコーン・セルマーに買収される)70年代から00年代にわたって発売されたものがそれで、黒や赤など様々な色のラッカーが施されてするものも存在します。
その中でもピストンのストロークが通常のトランペットより少し長いロングストロークと通常のものに近いショートストロークモデルがあったりしたのは意外と知られていないことだそうです。
僕も試奏したことがありますが(どのモデルだったか忘れてしまいましたが)、トランペットとしては恐らくビンテージのコミッティよりか優秀な楽器だという印象を受けました。
音程もかなりマシですし、やろうと思えば若干無理はあるものの、シンフォニックな音もそれなりに出ます。
音色はビンテージコミッティよりもさらにダークさに磨きがかかっており、おそらくコミッティを復刻したというよりはマイルスのサウンドを復刻したと表現したほうが近いかもしれません。
他にも今は亡きカンスタルからは1603、1603+が、アダムスからはA9というインスパイアモデルが販売されています(カンスタルの方はもう新品では入手不可能かと思いますが)。
また近年ではマーティン創始者の子孫が新たに立ち上げたMartin Brasswind Companyより復刻版が発売されています。
いずれも僕は実際に演奏したことはありませんが、YouTubeなどでその音を聴く限りは、どれもなかなかの音色をしているように見受けられます。
続き:伝説の陰に隠れた名品 Martin Handcraft Committee