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ジャズミュージシャンから見たトランペットのメーカーについて
トランペットってメーカーによってどんな違いがあるんですか?と問われることがあるので、今回はそれについて書いてみたいと思います。
ヤマハのトランペットに関しては以前こんな記事を書いたことがありますが、今回はそれの発展形(?)というような感じで読んでいただければ。
ちなみにそれぞれのメーカーの歴史などにはそこまで触れません。
そもそも知らないしそういったものは他で調べればすぐに見つかりますし、あくまでもジャズを演奏する者としての目線で語ってみようと思います。
まずはジャンルを問わず幅広く演奏されているヤマハのトランペットから。
ちなみにこれはYTR-8335Gというモデル。
初心者向けとされるものからオーケストラ、ジャズ、ポップスまで、幅広いジャンル、価格帯に対応したラインナップが用意されています。
まあ個人的にはメーカーの言う「○○向け」はあくまで参考程度にしか考えていませんが、それでもラインナップが幅広いというのは助かるものです。
特にヤマハのエントリーモデル(安いモデル)のコスパは非常に高いと思います。
幅広いラインナップと書きましたが、ヤマハのトランペットは総じて明るめの音色を持っています。
また吹奏感も全体的には軽めで、音を出すアクションに対してまあまあ速めの反応をしてくれるものが多いです。
スペック的にはバックの主力機種、ストラディバリウス180 シリーズと似たようなモデルも存在しますが、それでも音色の「根っこ」に明るい要素が多く含まれているなと感じます。
音程が良いというのは本当に良いことです。
ヤマハのトランペットは非常に音程が良く、演奏していると目の前に音程の定規が表れたかのようにすら感じます。
初めからヤマハしか吹いたことのない方にはその恩恵はあまり感じられないかもしれませんが、メイン楽器として音程のイマイチなビンテージを使っている僕としては本当に羨ましいと感じます。
トランペットを長いこと演奏していると誰しも一度はピストンの不具合に出くわすことかと思いますが、やはり一般的には、ピストン式トランペットで最もトラブルの起こりやすい箇所はピストンでしょう。
そんななかでもヤマハのピストンの精度はダントツに良く、トラブルを起こす可能性が非常に低いと思います。
基本的には少人数でのコンボからビッグバンドまで十分対応可能です。
しかししいて挙げるとすれば、明るめの音色と軽めの吹奏感、正確な音程による演奏のイージーさから、ビッグバンドでの演奏に向いていると思います。
特に最近モデルチェンジされたボビー・シューモデル(ただしラッカーモデル)は大変好評だそうです。
知名度ではヤマハと並ぶ(歴史的にはバックの方がずっと先輩ですが)アメリカのトランペットブランド。
現在は様々なモデルが出ていますが、上の画像のストラディバリウス180というシリーズ(汚れちゃって刻印がかなり見づらいのですが)が主力です。
バックの特徴といえば重厚でシンフォニックな音色です。
先にも書いた通り、スペック的にはヤマハからも似たようなモデルが出ていますが、重くて暗めという点ではやはりバックに分があります。
ついでに吹奏感で言うとやはり少し重めで、息を入れたときに硬めのバネのような粘りをわずかに感じたのちにポーンと楽に遠くへ音を飛ばしてくれるような感じです(もちろん演奏者がきちんとエアを使えていればですが)。
この音色と吹奏感はバックならではのもので、暗めの音や強めの抵抗感があった方が演奏しやすいという方には強くお勧めできます。
ちなみにバックのビンテージ品は軽めの吹奏感と、明るくしかしザラっとした渋めの音色のものが多い傾向にあるような気がします。
今から約100年前の1920年代からトランペットを製造している老舗ブランドなので、ビンテージ品も数多く存在します。
もちろんニューヨークバック、マウントバーノンなどと呼ばれるような本当に古いものなどは数が限られますし、そんなに状態の良くないものでも非常に高価です。
しかしそのようなビンテージまでいかなくとも80年代や90年代のものなどは製造された数も多く、比較的手ごろな値段で購入可能です。
もちろん現行品を購入するのも悪くはありませんが、製造番号と年代などの情報をよく調べてから購入を検討してみると、思わぬ掘り出し物に出くわすこともあるというのがバックの魅力のひとつではないかと僕は思います。
バックも汎用性の高いトランペットですが、個人的にはどちらかといえばコンボで演奏するのに向いていると感じます。
ビンテージのバックで渋い音色を狙ってもいいですし、現行品は演奏しやすいのはもちろん、太く、ダーク寄りな音色からよりパンチの効いた音色が手に入ります。
僕自身は社外パーツを装着してよりヘビーなセッティングにしたバックを数年間使っていました。
参考:KGU Brass トリムキット
他の二社と異なって基本的にはベルではなくバルブセクションに刻印が入ります。
響きを優先させるためにベルには敢えて何も彫らないんだとか聞いたことがありますが、最近のモデルはベル刻印のものも出ているのでどうなんでしょう(笑)
バックやヤマハとは一線を画した高級トランペットとして紹介されることもあり、実際お値段は大手トランペットメーカーとしては高めです。
上の画像は現在ジャズ以外の仕事に使っているB5 GPですが、これも新品の定価だと90万円もします。
僕はたまたま中古品を10分の1くらいの値段で手に入れられたのでラッキーでしたが、通常だったら購入を検討することさえできない高嶺の花です。
シルキーの特長といえば、吹いた瞬間にほとんどの人が気付くくらいの反応の良さです。
ですからアーティキュレーションに対する反応の良さはピカイチでしょう。
息を吹き込み、唇で振動が起こった瞬間にはすでにベルから音が出ているんじゃないかというようなフィーリングです。
これは振動の伝達速度が速いというよりは、他のメーカーのトランペットではきちんとした音にならないような唇の微細な振動にまで反応しているのだと思いますが、これは他のメーカーのトランペットでは体感することのできないものです。
もちろん振動に対する反応が良いから優れたトランペットであると一概に述べることはできませんが、個人的にはこの立ち上がりの気持ちよさはクセになってしまいます。
他社のトランペットと異なり雑味(のような成分?)が一切なく、どこまでも澄み渡った遠鳴りのする、明るい音色が特徴です。
一方吹いた時の抵抗感はかなり軽めで、今までトランペットの抵抗感に頼って演奏してきた方にとっては扱いづらいと感じるようです。
やはり軽めの吹奏感とアーティキュレーションに対する反応の良さから、やはりビッグバンドでの演奏に向いていると思います。
個人的な経験を言えばB5 GPでコンボで演奏してみると、素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれることは事実ですが、そのトランペットの持つ特性に合致するかと言われれば決してそうではないと思います。
というわけで現代のトランペット三大メーカーをジャズミュージシャン目線から語ってみました。
それぞれに異なった特徴がありますが、あくまでもここで述べたものはメーカーごとの大まかな違いです。
基本的なところはそこまで変わりませんが、同じメーカーでもモデルによっても多少違いが出たりしますので、好みのメーカーを見つけたらモデルごとの特徴についても吟味してみましょう。
ヤマハのトランペットに関しては以前こんな記事を書いたことがありますが、今回はそれの発展形(?)というような感じで読んでいただければ。
ちなみにそれぞれのメーカーの歴史などにはそこまで触れません。
ヤマハ
まずはジャンルを問わず幅広く演奏されているヤマハのトランペットから。
ちなみにこれはYTR-8335Gというモデル。
幅広いバリエーション
初心者向けとされるものからオーケストラ、ジャズ、ポップスまで、幅広いジャンル、価格帯に対応したラインナップが用意されています。
まあ個人的にはメーカーの言う「○○向け」はあくまで参考程度にしか考えていませんが、それでもラインナップが幅広いというのは助かるものです。
特にヤマハのエントリーモデル(安いモデル)のコスパは非常に高いと思います。
音色は全体的に明るめ
幅広いラインナップと書きましたが、ヤマハのトランペットは総じて明るめの音色を持っています。
また吹奏感も全体的には軽めで、音を出すアクションに対してまあまあ速めの反応をしてくれるものが多いです。
スペック的にはバックの主力機種、ストラディバリウス180 シリーズと似たようなモデルも存在しますが、それでも音色の「根っこ」に明るい要素が多く含まれているなと感じます。
音程が良い
音程が良いというのは本当に良いことです。
ヤマハのトランペットは非常に音程が良く、演奏していると目の前に音程の定規が表れたかのようにすら感じます。
初めからヤマハしか吹いたことのない方にはその恩恵はあまり感じられないかもしれませんが、メイン楽器として音程のイマイチなビンテージを使っている僕としては本当に羨ましいと感じます。
ピストンの精度はダントツ!
トランペットを長いこと演奏していると誰しも一度はピストンの不具合に出くわすことかと思いますが、やはり一般的には、ピストン式トランペットで最もトラブルの起こりやすい箇所はピストンでしょう。
そんななかでもヤマハのピストンの精度はダントツに良く、トラブルを起こす可能性が非常に低いと思います。
ヤマハのトランペットでジャズを演奏するなら
基本的には少人数でのコンボからビッグバンドまで十分対応可能です。
しかししいて挙げるとすれば、明るめの音色と軽めの吹奏感、正確な音程による演奏のイージーさから、ビッグバンドでの演奏に向いていると思います。
特に最近モデルチェンジされたボビー・シューモデル(ただしラッカーモデル)は大変好評だそうです。
バック
知名度ではヤマハと並ぶ(歴史的にはバックの方がずっと先輩ですが)アメリカのトランペットブランド。
現在は様々なモデルが出ていますが、上の画像のストラディバリウス180というシリーズ(汚れちゃって刻印がかなり見づらいのですが)が主力です。
重厚な音色
バックの特徴といえば重厚でシンフォニックな音色です。
先にも書いた通り、スペック的にはヤマハからも似たようなモデルが出ていますが、重くて暗めという点ではやはりバックに分があります。
ついでに吹奏感で言うとやはり少し重めで、息を入れたときに硬めのバネのような粘りをわずかに感じたのちにポーンと楽に遠くへ音を飛ばしてくれるような感じです(もちろん演奏者がきちんとエアを使えていればですが)。
この音色と吹奏感はバックならではのもので、暗めの音や強めの抵抗感があった方が演奏しやすいという方には強くお勧めできます。
ちなみにバックのビンテージ品は軽めの吹奏感と、明るくしかしザラっとした渋めの音色のものが多い傾向にあるような気がします。
製造年代からも選べる
今から約100年前の1920年代からトランペットを製造している老舗ブランドなので、ビンテージ品も数多く存在します。
もちろんニューヨークバック、マウントバーノンなどと呼ばれるような本当に古いものなどは数が限られますし、そんなに状態の良くないものでも非常に高価です。
しかしそのようなビンテージまでいかなくとも80年代や90年代のものなどは製造された数も多く、比較的手ごろな値段で購入可能です。
もちろん現行品を購入するのも悪くはありませんが、製造番号と年代などの情報をよく調べてから購入を検討してみると、思わぬ掘り出し物に出くわすこともあるというのがバックの魅力のひとつではないかと僕は思います。
バックのトランペットでジャズを演奏するなら
バックも汎用性の高いトランペットですが、個人的にはどちらかといえばコンボで演奏するのに向いていると感じます。
ビンテージのバックで渋い音色を狙ってもいいですし、現行品は演奏しやすいのはもちろん、太く、ダーク寄りな音色からよりパンチの効いた音色が手に入ります。
僕自身は社外パーツを装着してよりヘビーなセッティングにしたバックを数年間使っていました。
参考:KGU Brass トリムキット
シルキー
他の二社と異なって基本的にはベルではなくバルブセクションに刻印が入ります。
響きを優先させるためにベルには敢えて何も彫らないんだとか聞いたことがありますが、最近のモデルはベル刻印のものも出ているのでどうなんでしょう(笑)
バックやヤマハとは一線を画した高級トランペットとして紹介されることもあり、実際お値段は大手トランペットメーカーとしては高めです。
上の画像は現在ジャズ以外の仕事に使っているB5 GPですが、これも新品の定価だと90万円もします。
僕はたまたま中古品を10分の1くらいの値段で手に入れられたのでラッキーでしたが、通常だったら購入を検討することさえできない高嶺の花です。
反応の良さが段違い
シルキーの特長といえば、吹いた瞬間にほとんどの人が気付くくらいの反応の良さです。
ですからアーティキュレーションに対する反応の良さはピカイチでしょう。
息を吹き込み、唇で振動が起こった瞬間にはすでにベルから音が出ているんじゃないかというようなフィーリングです。
これは振動の伝達速度が速いというよりは、他のメーカーのトランペットではきちんとした音にならないような唇の微細な振動にまで反応しているのだと思いますが、これは他のメーカーのトランペットでは体感することのできないものです。
もちろん振動に対する反応が良いから優れたトランペットであると一概に述べることはできませんが、個人的にはこの立ち上がりの気持ちよさはクセになってしまいます。
軽めの抵抗感と明るい音色
他社のトランペットと異なり雑味(のような成分?)が一切なく、どこまでも澄み渡った遠鳴りのする、明るい音色が特徴です。
一方吹いた時の抵抗感はかなり軽めで、今までトランペットの抵抗感に頼って演奏してきた方にとっては扱いづらいと感じるようです。
シルキーのトランペットでジャズを演奏するなら
やはり軽めの吹奏感とアーティキュレーションに対する反応の良さから、やはりビッグバンドでの演奏に向いていると思います。
個人的な経験を言えばB5 GPでコンボで演奏してみると、素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれることは事実ですが、そのトランペットの持つ特性に合致するかと言われれば決してそうではないと思います。
というわけで現代のトランペット三大メーカーをジャズミュージシャン目線から語ってみました。
それぞれに異なった特徴がありますが、あくまでもここで述べたものはメーカーごとの大まかな違いです。
基本的なところはそこまで変わりませんが、同じメーカーでもモデルによっても多少違いが出たりしますので、好みのメーカーを見つけたらモデルごとの特徴についても吟味してみましょう。