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KGU Brassマウスピースブースター
3月のとある日、突然KGU Brassから一通のメールを受け取りました。
KGU Brassとは以前メインで使っていたバックに着けているトリムキットのメーカー。
そんな会社がなんじゃらほい?と思って内容を読んでみると、どうやら以前KGU Brassのトリムキットを取り上げた記事を経由してKGU Brassに注文が多く入っているとのこと。
だからタダでうちのマウスピースブースター送るからレビュー書いてくんない?ということでした。
その後新型コロナの影響でブースターの到着が遅れ、こっちも記事どころじゃない状態が続いていたのですが、やっとこさ時間が取れるようになってきました。
というわけで今回はKGU Brassのトランペットマウスピースブースターについての記事です。
まず実物はこちら。
このマウスピースブースターは5タイプ存在し、今回送っていただいたものは最もスタンダードなクラシックと呼ばれるモデルです。
トランペットのマウスピースを重くし、何らかの効果を得るという試みは決して目新しいものではありません。
古くはバックのメガトーンや、僕が使っているモネットのマウスピースもヘビーモデルが存在しますし、通常のマウスピースに後付けでリング状の重りを付けるものもいくつかのブランドから発売されています。
そもそも重いマウスピースを使用することの効果には賛否両論あったりもするのですが、その効果について簡単にまとめてみます。
マウスピースを重くすることによってマウスピースそのものが振動しにくくなります。
これがピンと来ない人は、重いものと軽いものだったらどっちの方が動かしやすい(=振動させやすい)か考えてみると良いでしょう。
これまでマウスピースの部分でマウスピースを振動させることによって消費されていたはずのエネルギーが消費されず、マウスピースより先へ向かう、というのがこの場合の遠鳴りの原理であると僕は思います。
物理を勉強していないので絶対かと言われるとちょっと自信はありませんが(笑)
当たり前のことですが、音が遠くへ飛んでいくということは近くで鳴る割合は低くなります。
ですから遠鳴りすることのデメリットとして演奏中の自分の音が自分で聴きとりづらくなる=モニタリングしづらくなるということも挙げておかねばなりません。
明らかに狙った音に当てやすくなります。
その分リップスラーやリップトリルなどはわずかにやりづらくなるような印象を受けますが、メリットの方が顕著に表れるのに比べ、デメリットの方は「言われてみればそうかなあ」という程度です。
音の明るい成分が少なくなると言ったほうが良いかもしれません。
濃厚な味付けになり、パンチを効かせたいときにもガツンとはまる感じです。
音色に関しては好みの分かれるところでしょう。
透き通ったスープの昔ながらの中華そばがノーマルだとすると、背脂たっぷりの濃厚な豚骨ラーメンがブースター装着状態という感じでしょうか(?)
ラーメンもトランペットの音色も人によって好みがありますし、気分によってもチョイスが変わるというのと同じです。
マウスピースブースターは後付けパーツなので、やろうと思えば演奏するジャンルやシチュエーションによって変更することも可能です。
人によってはヤマハやバックなどのような通常のトランペットには一般的なマウスピースじゃなければならないという人もいますし、そんなの気にせず好きなウエイトのものを使えば良いという人も存在します。
個人的には確かにトランペットとマウスピースの重量バランスを無視することは問題ですが、あまり極端な組み合わせでなければ問題はないかと思います。
少なくとも僕自身、KGU Brassトリムキットを装着してヘビーにしたバックとノーマルのシルキーB5GPで吹き比べてみましたが、どちらも非常に扱いやすくなりました。
普段使っているモネットのマウスピースに装着できるのならば普段使いしたいくらいです。
そもそもトランペットの演奏はプロであれアマチュアであれ自由に楽しくやれば良いのですが、しかしあえてトランペットを教える立場から言うならば、いくつか指摘するポイントはあります。
KGU Brassのマウスピースブースターは最も軽いものでも55グラムと、他社製品に比べると重めのラインナップとなっています。
その分がっつりと効くわけなのですが、遠鳴りだけを求めるのならばより軽い他社製品にしておいた方が無難でしょう。
なぜならKGU Brassのマウスピースブースターは音色そのものをかなりダークにしてしまうからです。
またトランペットを遠鳴りさせられない方はそもそも演奏技術が未熟な方も少なくありませんが、そういった方はマウスピースが重くなったことにより抵抗感が強く、演奏しづらく感じることがあります。
演奏中しながら遠くへ音を飛ばそう、頑張ってトランペットをコントロールしようという考えが頭の中を支配してしまうとブレスは浅くなり、体は力んでしまいます。
普段からこういう演奏をする傾向にある方はマウスピースブースターの使用は向いていないでしょう。
軽めのマウスピース、軽めのトランペットの方がまだ扱いやすいでしょう。
あくまで私見ですが、ジャズのコンボをやるにはうってつけではないでしょうか。
ウィントンマルサリスをはじめとして濃厚でダークな音色に憧れる方は多いでしょう。
コンボではトランペットの遠鳴りはあまり求められませんが、KGU Brassのような重めのマウスピースブースターが音色へもたらす効果はまさしくコンボ向けです。
また同じ音量であれば装着以前よりも楽に出すことができるため、よりリラックスした柔らかな音色を出すことが可能になります。
というわけでやっとKGU Brassのマウスピースブースターに関してです。
詳しくは公式ホームページをご覧になっていただければわかると思いますが、クラシック、コーン、ロケット、ヘビー、ラディエーターの5種類が存在します。
軽い順に並べると、コーン(55g)、クラシック(75g)、ロケット(75g)、ラディエーター(90g)、ヘビー(110g)となります。
また仕上げの種類も多く、それぞれローブラス(何のメッキもせず真鍮剥き出し)、アンティークコパーラッカー、アンティークブロンズラッカー、シルバー、ブラッシュドシルバー、ゴールドの6種類です。
お値段は65ドルからで、公式ホームページやebay経由であれば送料無料なので、日本の楽器店で買うよりはかなりお得です(2020年6月現在)。
KGU Brass公式YouTubeチャンネルでは各製品についてのデモ動画がアップされているので、購入前にこちらを見て検討するのも良いでしょう。
注意点があるとすれば一部装着できないマウスピースがあるという点です。
特にモネットのようにシャンクの短いマウスピースには装着できません。
モネットの中ではトラディションプラスは装着できそうな見た目をしていますが、シャンクが短く、レシーバーと当たってしまうので装着できません。
確認してはいませんが、同様の理由からARレゾナンスやロータスなどのマウスピースも装着不可能かと思います。
またバックのメガトーンなどのように元から太いマウスピースにも恐らく装着できないはずですから、この点はよく注意してください。
これってどういう構造になっててどうやって装着すんの?と思われた方、多くありません?
僕はそうでした(笑)
下の動画が分かりやすくて良いでしょう。
装着のコツとしては動画の冒頭のようにマウスピースに差し込むときにグッと力強く差し込んだ上で(動画04秒あたり)、ブースターのリングが外れるギリギリまでしっかりと本体をねじ込むこと(動画08秒あたり)です。
なぜなら装着したブースターにぐらつきがあっては効果が半減どころかかえって吹きづらくなるからです。
これはぐらついたブースターが振動を吸収してしまうためで、ちょうど建物の免震構造のようなイメージです。
僕が全力でグイグイ押し込んでも外れなくなることはありませんので心配はいりません。
その後でもし外したくなったらブースター本体をさらにねじ込んでいけばリングがスルっと外れます。
というわけでKGU Brassマウスピースブースターのご紹介でした。
お値段もリーズナブルですし、6通りの仕上げが存在するというのも見た目にこだわる人にとってはありがたい話でしょう。
僕は普段使っているマウスピースがモネットなので装着できないのですが、もしできたのなら普段使いしたいなというくらいの代物でした。
KGU Brassとは以前メインで使っていたバックに着けているトリムキットのメーカー。
そんな会社がなんじゃらほい?と思って内容を読んでみると、どうやら以前KGU Brassのトリムキットを取り上げた記事を経由してKGU Brassに注文が多く入っているとのこと。
だからタダでうちのマウスピースブースター送るからレビュー書いてくんない?ということでした。
その後新型コロナの影響でブースターの到着が遅れ、こっちも記事どころじゃない状態が続いていたのですが、やっとこさ時間が取れるようになってきました。
というわけで今回はKGU Brassのトランペットマウスピースブースターについての記事です。
まず実物はこちら。
このマウスピースブースターは5タイプ存在し、今回送っていただいたものは最もスタンダードなクラシックと呼ばれるモデルです。
マウスピースブースターの効果
トランペットのマウスピースを重くし、何らかの効果を得るという試みは決して目新しいものではありません。
古くはバックのメガトーンや、僕が使っているモネットのマウスピースもヘビーモデルが存在しますし、通常のマウスピースに後付けでリング状の重りを付けるものもいくつかのブランドから発売されています。
そもそも重いマウスピースを使用することの効果には賛否両論あったりもするのですが、その効果について簡単にまとめてみます。
1.遠鳴りするようになる
マウスピースを重くすることによってマウスピースそのものが振動しにくくなります。
これがピンと来ない人は、重いものと軽いものだったらどっちの方が動かしやすい(=振動させやすい)か考えてみると良いでしょう。
これまでマウスピースの部分でマウスピースを振動させることによって消費されていたはずのエネルギーが消費されず、マウスピースより先へ向かう、というのがこの場合の遠鳴りの原理であると僕は思います。
物理を勉強していないので絶対かと言われるとちょっと自信はありませんが(笑)
当たり前のことですが、音が遠くへ飛んでいくということは近くで鳴る割合は低くなります。
ですから遠鳴りすることのデメリットとして演奏中の自分の音が自分で聴きとりづらくなる=モニタリングしづらくなるということも挙げておかねばなりません。
2.音のツボが広くなる
明らかに狙った音に当てやすくなります。
その分リップスラーやリップトリルなどはわずかにやりづらくなるような印象を受けますが、メリットの方が顕著に表れるのに比べ、デメリットの方は「言われてみればそうかなあ」という程度です。
3.暖かく丸みを帯びた、もしくは濃厚な音色になる
音の明るい成分が少なくなると言ったほうが良いかもしれません。
濃厚な味付けになり、パンチを効かせたいときにもガツンとはまる感じです。
音色に関しては好みの分かれるところでしょう。
透き通ったスープの昔ながらの中華そばがノーマルだとすると、背脂たっぷりの濃厚な豚骨ラーメンがブースター装着状態という感じでしょうか(?)
ラーメンもトランペットの音色も人によって好みがありますし、気分によってもチョイスが変わるというのと同じです。
マウスピースブースターは後付けパーツなので、やろうと思えば演奏するジャンルやシチュエーションによって変更することも可能です。
マウスピースブースターに対する考え方
人によってはヤマハやバックなどのような通常のトランペットには一般的なマウスピースじゃなければならないという人もいますし、そんなの気にせず好きなウエイトのものを使えば良いという人も存在します。
個人的には確かにトランペットとマウスピースの重量バランスを無視することは問題ですが、あまり極端な組み合わせでなければ問題はないかと思います。
少なくとも僕自身、KGU Brassトリムキットを装着してヘビーにしたバックとノーマルのシルキーB5GPで吹き比べてみましたが、どちらも非常に扱いやすくなりました。
普段使っているモネットのマウスピースに装着できるのならば普段使いしたいくらいです。
そもそもトランペットの演奏はプロであれアマチュアであれ自由に楽しくやれば良いのですが、しかしあえてトランペットを教える立場から言うならば、いくつか指摘するポイントはあります。
1.遠鳴りというメリットだけを狙うのなら軽めのものを
KGU Brassのマウスピースブースターは最も軽いものでも55グラムと、他社製品に比べると重めのラインナップとなっています。
その分がっつりと効くわけなのですが、遠鳴りだけを求めるのならばより軽い他社製品にしておいた方が無難でしょう。
なぜならKGU Brassのマウスピースブースターは音色そのものをかなりダークにしてしまうからです。
2.力んで演奏する人には不向き
またトランペットを遠鳴りさせられない方はそもそも演奏技術が未熟な方も少なくありませんが、そういった方はマウスピースが重くなったことにより抵抗感が強く、演奏しづらく感じることがあります。
演奏中しながら遠くへ音を飛ばそう、頑張ってトランペットをコントロールしようという考えが頭の中を支配してしまうとブレスは浅くなり、体は力んでしまいます。
普段からこういう演奏をする傾向にある方はマウスピースブースターの使用は向いていないでしょう。
軽めのマウスピース、軽めのトランペットの方がまだ扱いやすいでしょう。
3.ジャズのコンボには向いている
あくまで私見ですが、ジャズのコンボをやるにはうってつけではないでしょうか。
ウィントンマルサリスをはじめとして濃厚でダークな音色に憧れる方は多いでしょう。
コンボではトランペットの遠鳴りはあまり求められませんが、KGU Brassのような重めのマウスピースブースターが音色へもたらす効果はまさしくコンボ向けです。
また同じ音量であれば装着以前よりも楽に出すことができるため、よりリラックスした柔らかな音色を出すことが可能になります。
ラインナップ
というわけでやっとKGU Brassのマウスピースブースターに関してです。
詳しくは公式ホームページをご覧になっていただければわかると思いますが、クラシック、コーン、ロケット、ヘビー、ラディエーターの5種類が存在します。
軽い順に並べると、コーン(55g)、クラシック(75g)、ロケット(75g)、ラディエーター(90g)、ヘビー(110g)となります。
また仕上げの種類も多く、それぞれローブラス(何のメッキもせず真鍮剥き出し)、アンティークコパーラッカー、アンティークブロンズラッカー、シルバー、ブラッシュドシルバー、ゴールドの6種類です。
お値段は65ドルからで、公式ホームページやebay経由であれば送料無料なので、日本の楽器店で買うよりはかなりお得です(2020年6月現在)。
KGU Brass公式YouTubeチャンネルでは各製品についてのデモ動画がアップされているので、購入前にこちらを見て検討するのも良いでしょう。
注意点があるとすれば一部装着できないマウスピースがあるという点です。
特にモネットのようにシャンクの短いマウスピースには装着できません。
モネットの中ではトラディションプラスは装着できそうな見た目をしていますが、シャンクが短く、レシーバーと当たってしまうので装着できません。
確認してはいませんが、同様の理由からARレゾナンスやロータスなどのマウスピースも装着不可能かと思います。
またバックのメガトーンなどのように元から太いマウスピースにも恐らく装着できないはずですから、この点はよく注意してください。
装着方法、装着のコツ
これってどういう構造になっててどうやって装着すんの?と思われた方、多くありません?
僕はそうでした(笑)
下の動画が分かりやすくて良いでしょう。
装着のコツとしては動画の冒頭のようにマウスピースに差し込むときにグッと力強く差し込んだ上で(動画04秒あたり)、ブースターのリングが外れるギリギリまでしっかりと本体をねじ込むこと(動画08秒あたり)です。
なぜなら装着したブースターにぐらつきがあっては効果が半減どころかかえって吹きづらくなるからです。
これはぐらついたブースターが振動を吸収してしまうためで、ちょうど建物の免震構造のようなイメージです。
僕が全力でグイグイ押し込んでも外れなくなることはありませんので心配はいりません。
その後でもし外したくなったらブースター本体をさらにねじ込んでいけばリングがスルっと外れます。
というわけでKGU Brassマウスピースブースターのご紹介でした。
お値段もリーズナブルですし、6通りの仕上げが存在するというのも見た目にこだわる人にとってはありがたい話でしょう。
僕は普段使っているマウスピースがモネットなので装着できないのですが、もしできたのなら普段使いしたいなというくらいの代物でした。