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トランペットで唇がバテないようにするための基本的な考え方

唇の画像



 



以前何かの調べ物をしているときに「いいマウスピースとは唇がバテても吹くことができるマウスピースだ」という趣旨のことが書いてあるネット記事に出くわしたことがあります。


プロプレイヤーが演奏の仕事のためにやむなくというのならまだしも、そうでない一般の方へ向けたアドバイスとしては、これは明らかには誤ったものです。


もしかするとたまたま目にした記事がインチキ記事だったのかもしれません(Google検索ではかなり上位に上がってくるサイトでしたが)。


しかし他にも吹奏楽部の顧問から「バテても気合で吹け」「バテてからが勝負」などという時代遅れも甚だしいアドバイスをされたという話を、たまにではありますが未だに耳にすることがあります。


以前書いた腹筋に関する記事のときもそうでしたが、未だに日本のトランペット業界(?)ではおかしな迷信が拭い去られていないようでげんなりした気持ちにさせられます。


 



唇がバテるとは?


唇が「バテる」という状態はトランペットを吹いたことのある方なら誰しも経験したことがあるでしょう。


当然のことながらトランペットを演奏するためには唇を振動させなければなりません。


唇は粘膜ですから、さまざまな刺激には弱い部分です。


その弱い粘膜同士を空気の流れを当ててブルブル震わせればあっけなく限界が訪れるのは当たり前です。


しかし上手いトランペットプレイヤーを見ていると、長い時間吹いていてもハイトーンを吹きまくっても全然平気そうに見えます。


しかし先ほど書いた通り、唇は弱い器官です。


それではあんな風にトランペットを演奏するためにはどうすればいいのでしょうか?


 


唇を鍛えるという言葉に惑わされるな


上手いトランペッターは唇を鍛えているからあんなに吹けるんだという考え方があります。


特に日本のジャズトランペッターではどう見ても無理のある奏法で演奏する人は少なくありませんので、残念ながらそういった考え方が100%間違っているとは言い切れません。


なぜならそのやり方で一定の地位と生活の糧を得ることができている人がいるのは事実ですから。


余談ですが、僕自身も遊びの演奏ではつい自分のキャパシティを超えて吹いてしまうことがよくあります(笑)


 


しかし、だからといってトランペットを上達したい人全てにそういった考え方を勧めることができるかというと全くそうではありません。


そもそも粘膜は体の他の部分に比べて細胞の入れ替わりの早い部分です。


早いサイクルで入れ替わってしまう唇そのものを厳密な意味において「鍛える」ことは不可能だとは思いませんか?


「唇を鍛える」といっても鍛える部分は唇の周りにある口輪筋なのか唇の表皮のことを指すのか、語る人によってその定義すらもまちまちです。


以前も書きましたが、定義の曖昧な言葉を用いたアドバイスは、言う方は楽ですが受け取る側は混乱してしまい迷惑なだけです。


 



唇がバテてしまったらどうするか


充血して腫れたうえに表面にダメージを負って限界に達した唇をそれ以上振動させようとしてもそれは無理というものです。


もしバテてしまったと感じたらその日はトランペットを吹くのをやめましょう。


粘膜はダメージを受けやすい反面、再生も早いものです。


バテ具合にもよりますが、たいていの場合は一晩眠れば100%とはいかないまでも、かなり回復できていることでしょう。


 


大事なのは節約&効率という発想


そもそも弱い器官である唇。


それを用いて長時間美しい音で頭の中に思い描いた通りの演奏をするためにはその唇になるべくダメージを与えないようにするべきです。


言い換えるならば無駄に振動させないことが肝心です。


冒頭に書いたように唇がバテても吹けるように……などという考え方とは全く逆の発想です。


そこでごくシンプルに考えてみましょう。


唇を節約する=バテさせないためには2つのことが考えられます


1.トランペットを吹く時間そのものを短くする


2.少ない振動でトランペットを吹けるようにする


 


1.トランペットを吹く時間そのものを短くする


これにはさらに2つの意味があります。


まず第一に無駄な練習をやめましょう。


詳しくはまた別の機会に書こうと思いますが、目的のはっきりとしない練習は時間と労力の無駄……とまでは言い切りませんが、大変非効率的です。


ここをお読みの方は練習時間が限られている人がほとんどでしょうが、その限られた時間を非効率的に使っていては、思うようにトランペットを演奏できるようになるのは夢のまた夢だとは思えませんか?


ですから練習をやるのなら、その目的をはっきりとさせましょう。


逆説的な言い方ですが、効率の良い練習によって順調に上達していけば、唇をバテさせずにトランペットを吹くことのできる時間はどんどん長くなります。


 


そして第二に休憩をこまめに取ろうということです。


全ての場合に当てはまるとは言えませんが、「吹いた時間と同じだけ休め」と言われることがあるくらいです。


またその休憩の取り方も30分吹いて30分休むなどではなく、5~10分練習したら同じだけ休むというようになるべく短いスパンで休憩と練習を繰り返すのが良いでしょう。


 


ただしこのように時間の長さで練習と休憩を区切るのはあくまでも一例です。


唇の疲れ具合をうまく把握できない初心者などはこのやり方で練習と休憩の配分した方が失敗しづらいでしょう。


唇の状態をある程度把握できる方は時間で区切るのではなく、唇がそろそろバテそうな気がすると少しでも感じたら直ちに休憩をとるというやり方の方が良いでしょう。


 


唇がバテたらではありません。


唇がそろそろバテそうな気がすると少しでも感じたら直ちにがポイントです。


 


2.少ない振動でトランペットを吹けるようにする


これは効率良く唇を振動させようとも言い換えることができるかもしれません。


決して振動する回数を減らそうという意味ではありません。


しかし唇が振動する強さや範囲が小さくなれば唇に与えるダメージは小さくなるはずです。


そのためにはどうしたら良いか。


 


他の部分でサポートをするのです。


とは言っても唇以外の部分を実際に振動させようというわけではなく、唇で生み出された振動(=音)をどこか他の部位を利用して共鳴させてやるという発想です。


もし自分の体で唇の振動を共鳴させてやることができるのならば、唇そのものの仕事量は少なくて済みます。


これが結果として持久力の向上や音域の拡大、そしておまけに音色の向上に役立つのです。


唇の振動をどう共鳴させるかについては長くなってしまうので詳しくは今後記事にまとめますが、とにかく今回お伝えしたいことは以下の通り。


 


・唇を「鍛える」という考え方はトランペットの効率的な上達を阻害する可能性がある。


・唇はバテる前に休ませる。もしバテたらその日は練習終了というつもりで。


・はっきりとした目標の無い、無駄な練習はしない。


・唇の振動を身体の他の部分を利用して共鳴させることによって唇の仕事量を減らす。


 


間違っても「バテてからが勝負」だとか「バテても吹けるマウスピースがいいマウスピースだ」という考え方には陥らないようにましょう。



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