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初心者だってもっとバラードを吹こう。前編
初心者の方にとってジャムセッションでバラードを演奏するのはちょっとハードルが高いと感じられるかもしれませんが、バラードの演奏はアドリブの技術だけでなくトランペットの演奏技術を磨くためにもとても役立ちます。
速いテンポで迫力のある演奏も良いですし、ミディアムのゆったりとしたスイング感もジャズの魅力の1つですが、ぜひ多くの人にバラード演奏の楽しさと魅力を知っていただきたいものです。
バラード練習の効能(?)4つ
バラードを練習すると具体的にどんなことに役に立つのでしょうか。
1.ゆっくりなのでアラが目立ちやすい
ある程度以上のテンポであればいい加減に音符を演奏してもそんなには目立ちません。
速い曲であればなおのこと勢いでごまかすことができてしまいます(笑)
一方バラードであれば、例えば8分音符をちょっと雑に吹くだけで思いっきりダサくなってしまいます。
ですからバラードを練習することは普段から自分の演奏で雑になっている部分をクローズアップするのにぴったりです。
2.いろんな音符を使う必要に迫られる
バラードで8分音符ばかりをずっと並べるような演奏をしていては退屈な演奏に聴こえてしまいます。
ゆったりしたテンポの中で8分音符だけでなく、3連符や16分音符など様々な音符を組み込むことによってよりメリハリの効いた演奏をすることが可能になります。
ミディアム以上のテンポでは必ずしもこういったことを意識しなくてもそれなりの演奏ができてしまうため、音符の種類について考える必要が少なくて済んでしまうと言えるでしょう。
もちろんどんなテンポの曲であってもいろんな長さの音符を扱えることに越したことはありませんから、バラードの練習はそのためにもとても役立ちます。
3.冷静に落ち着いて練習できる
トランペットの演奏では基礎練習ではうまくいくことが曲の演奏となった途端に全然できなくなってしまうということが起こりがちです。
曲の演奏になると身構えてしまい、無理な力を入れた状態で演奏してしまうことによるものなのですが、テンポの遅い曲であればこれをある程度軽減することができます。
そもそもテンポがゆっくりであれば、今無理のある吹き方になっているかどうかをしっかりと確認しながら演奏していくことが可能です。
演奏で上手くいかないことをゆっくりなテンポで確認し、少しずつテンポアップしていくという練習方法はジャンルや楽器問わずとてもオーソドックスなやり方ですが、バラードの練習もこれと似たような効果があるということができるでしょう。
4.「歌心」のトレーニングにもってこい
上で書いたことと少し重複するようですが、ゆっくりなテンポで落ち着いて演奏することは演奏のなかで歌心を育むことに大いに役立ちます。
歌心が無いのをテンポの勢いでごまかすことができないので慣れないうちは嫌になるかもしれません。
しかし歌心というものはいかなるジャンルでいかなる演奏をするときにも求められるものです。
もし仮にあなたに世界一のテクニックがあり、唯一無二のスタイルの演奏をしていたとしても歌心がなければそれは芸術ではなくただの曲芸になってしまいます。
バラードを練習する目的としてはこれが最も重要なものです。
初心者はとりあえずテーマだけでも練習してみよう
初心者がスローな曲をジャムセッションで実際に演奏するのはちょっと大変と書きましたが、アドリブではなくテーマを1人で練習として演奏するだけであれば初心者にとっても決して難しいものではありません。
まずはあまりフェイク(メロディを崩すこと)せず、譜面通りに演奏してみましょう。
一気に1コーラス全部吹いても良いのですが、なんだか上手くいかない場合は8小節ずつなどに区切り、自分なりにどんなところが問題なのかよく考えてみましょう。
音量はメゾピアノくらいを基準としてみましょう。
そのうえで、この練習には以下のように3通りの練習方法が存在します。
1.iReal Proなどで伴奏とともに
吹いている音と伴奏として流れているハーモニーがどんな関係にあるのかよく感じ取るようにしましょう。
伴奏を流して練習するときにありがちなのですが、カラオケのように伴奏に乗っかるつもりで練習してはあまり意味がありません。
とは言ってもiReal Proなどによる伴奏など、人間による生の伴奏でない場合はなかなかそうはいかないのですが、それでも原則として自分の吹く音と伴奏は対等な関係です。
自分の演奏するメロディの周りで流れているハーモニーの動きの美しさをよく感じることが重要です。
これによってその曲の言わんとするストーリーや流れを感じ取る感覚を鋭くすることができ、結果として歌心を育むことに繋がります。
2.メトロノームを使って
テンポ60~75くらいでメトロノームを鳴らして練習してみましょう。
吹奏楽部出身の方だと「メトロノームに合わせて吹いて!」と言われたことが100%あるでしょうが、メトロノームに「合わせる」ことには本来あまり意味はありません。
このバラードの練習でもメトロノームに合わせるように演奏するのではなく、メトロノームが提示してくれる時間の流れとともにメロディを紡いでいくようなイメージです。
メトロノームの鳴らす音にぴったり合わせることにとらわれすぎると歌心が死んでしまいます。
またメトロノームが提示してくれるのは4分音符だけですが、その中に8分や16分、3連符など複数の音符が同時に流れているということを感じることができるとさらに良いでしょう。
トランペットを演奏せずメトロノームだけをしばらく聴き、4分音符の中にそれらの音符を感じ取ろうとするのも良いでしょう。
3.何も使わずただ1人で吹く
きっとテンポがもたったり走ったりするでしょうが、同じテンポで演奏することのみに気を取られて他のことがおろそかになっては本末転倒です。
多少のテンポの変化は気にする必要はありません。
人間なのですから曲の最初と最後まで全く同じテンポ演奏できたとしても曲芸として以上の価値はありません。
それよりもメロディや自分のトランペットのサウンドの美しさを感じることに専念しましょう。
自分のトランペットのサウンドを美しく感じられない方はもしかしたら自分のサウンドに対してストイックになりすぎているかもしれません。
どんな美しいサウンドであってもねちねちとアラを探そうとすれば見つかってしまいます。
ストイックに美しいサウンドを追求することはとても大事なことですが、できばえが90点だからといって「100点を取れないから自分はまだまだ修行が足りない」を長年続けていては心が持ちません。
「40点だったけど少しは俺も頑張ったじゃん」というように自分を肯定する思考が重要です。
というわけで、はじめのうちは伴奏を流さないと面白くないかもしれませんが、その時の気分などでも結構ですので最終的には3つとも挑戦してみてください。
※慣れてきたら伴奏をつけての練習はしなくて結構です。
もし演奏していて身体のどこかに(基礎練習のときとは異なる)力が入っているようなら何故そうなってしまうのかよく考えてみましょう。
そのまま練習し続けても改善することは無い……とまでは言い切れませんが、曲を演奏している状態での身体からのフィードバックを丁寧に観察し、考えることは効率の良い上達のためにはとても役立つことです。
ヒントは「曲のテーマを演奏する」というよりは普段落ち着いて基礎練習をしているのと同じように吹くということです。
もしその基礎練習の仕方がおかしいという場合は諦めて金村盡志トランペット教室へお越しください(笑)
ただ、基本はロングトーンの延長線のようなイメージでたっぷりと吸った息を優しくまっすぐトランペットに吹き込んでいくような感じです。
そのためにもはじめのうちはテーマをフェイクせずに練習した方が良いのですが、少し慣れてきたら好きなようにフェイクしてみましょう。
初心者だってもっとバラードを吹こう。後編