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これからトランペットを買う方はご注意!ジャズ向きのトランペットって何?
新学期ですしそれっぽい記事をもう一つ。
この時期は部活やサークルに入ったりして新たにトランペットを買う人が多いでしょうから、今回はずばり「ジャズ向きと呼ばれる」トランペットについて書いてみようと思います。
紛らわしいタイトルで申し訳ありませんが、「ジャズ向きの」トランペットではありません。
「ジャズ向きと呼ばれる」トランペットについてです。
関連1:ジャズトランペットの伝説的存在、Martin Committee
関連2:伝説の陰に隠れた名品 Martin Handcraft Committee
関連3:ジャズミュージシャンから見たトランペットのメーカーについて
ノーラッカー
ラウンドクルーク
リバース管
ライトウェイト
ヘビーウェイト(ヒレ付き)
まずは思いつく限り書き出してみました。
以前AOI JAZZでも書きましたが、そもそもジャズと言ったっていろいろあるのですから十把一絡げに「ジャズ向き」と括ってしまうこと自体ナンセンスです。
もし楽器屋さんで「このトランペットはジャズ向きですよ!」と言われたら必ず「どんなジャズ?」と聞き返してみましょう。
ここでは以前の記事と同じように「ジャズ向き」を大きく2つのベクトルに分け、より詳しく考えてみます。
それは「ビッグバンド」と「コンボ」です。
ビッグバンド向けとしては軽めの吹奏感で明るくパリッとした音色が好まれる傾向があります。
上に挙げたものだと「ラウンドクルーク」「リバース管」「ライトウェイト」の3つが当てはまるでしょう。
一方コンボはダークで渋めの音色が好まれる傾向にあります。
この場合は「ノーラッカー」「ヘビーウェイト」が該当するでしょう。
ただしここで書いてあることが全てに当てはまるわけではありません。
コンボでの演奏が多いプレイヤーでもライトウェイトでラウンドクルークのトランペットを吹いているケースはいくらでもありますし、その逆もまた然りです。
この後に出てくるマーティンコミッティだってコンボで使うのに向いているとされていますが決してヘビーウェイトではありません。
ただそれを言っていても話が進みませんから、ここでは少し乱暴ではありますが断定的に語ってしまうことをお許しください。
ノーラッカーとはトランペットの素材である真鍮の上に何もコーティングをしていないもののことです。
ローブラス、アンラッカーとも呼ばれます。
ノーラッカーの楽器は真鍮の表面にラッカーや銀メッキをされていないため、ダークな音が出ると言われています。
楽器の素材の上に何のコーティングもないためほっておくとどんどん酸化してしまいますが、それが本来の姿だそうです。
しかし演奏が終わったら脂や水分をきちんと拭き取る必要があり、お手入れには少し注意が必要です。
写真のトランペットは借り物のマーティンコミッティ。
いかにもジャズっぽいというか、大変味のある見た目をしています。
完全なノーラッカーではありませんが、バルブセクションはほぼラッカーが剥げてしまっている状態です。
この記事を書くに当たってノーラッカーの楽器について調べてみましたが、「ノーラッカーの楽器を綺麗に酸化させるにはどうすれば良いですか?」というトピックの多いこと多いこと・・・。
そんなこと考える時間があるならその分練習すれば見た目も演奏も勝手にかっこよくなるのに(笑)
チューニング管がスクエアではなく半円形(=ラウンド)をしています。
一般的にはラウンドの方が空気抵抗が少なく、息がスムーズに入ると言われていますが、僕自身同じ条件で吹き比べたことがないので分かりません。
初心者は抵抗がない方が吹きやすいと言われることもありますが、実際のところはケースバイケースです。
こちらはチューニング管のオスメスが写真のように逆になっているものです。
リバース管であれば流れる空気が管内の段差に当たらないために抵抗感が少ないと言われていますが、僕はこれには懐疑的です。
個人的には管内の段差が原因というよりも、下の写真のようにベルとマウスパイプを繋ぐ支柱の位置が手前に来ることによる変化が大きいのではないかと思います。
実際チューニング管はノーマルのまま支柱の位置だけを手前にずらしたものを吹いたことがありますが、リバース管とほぼ同じような効果を感じました。
通常のものにくらべて支柱が手前に来ることでベルをよりフリーに振動させることができるということは以下のようなメリット、デメリットがあると思います。
メリット
ベルから演奏者側に返ってくる音が増えるため、周囲がうるさい環境(ビッグバンドのホーンセクションの中)や、でも自分の音が聴きやすい。
デメリット
本来ベルより向こうへ飛んでいくはずの振動が少なくなるため、遠達性は劣る(?)
僕個人としては支柱の位置が手前にあった方が自分の音がより聴こえるので好みではあります。
ライトウェイトと呼ばれるものの多くは管の厚み自体が薄くなっていたり、支柱の数が少なくなっていたりします。
下の写真は2番管の比較ですが、左右で管の厚みが微妙に異なるのがお分かりでしょうか。
一方ヘビーウェイトモデルでは支柱が多かったり、モネットのようにヒレ状になっているものすらあります。
マウスピースを差し込むレシーバーや管そのものの厚みが全体的に増している場合もあります。
僕もそこまで詳しい方ではないので各パーツごとの変化に関してはあまり言及できません。
ただ全体的にはパーツが多かったり重いものほど吹奏感は重く、音が遠くへ直線的に飛び、音色はダークになります。
逆に軽いものほど吹奏感も軽く、自分へ返って来る音が多く明るい音色になります。
これだけ読むとトランペットの音を遠くへ飛ばすためにはヘビーなものをと思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。
同じ条件で演奏したときに音がより遠くへ飛ぶということは自分に聞こえる音の量が減るということです。
もちろんその違いはわずかですが、演奏しながら自分の音をしっかり把握できないということはトランペットの演奏をする上で不安なものです。
自然な反響の得られない野外ステージなどでPAのセッティングが上手くいかないと死ぬような思いをするのはそのためです(笑)
例えばヘビーウェイトトランペットの先駆けとして知られるモネットではそのデメリットを和らげるために非常に大きなベルやフレンチビードを採用するなど、バランスをとる工夫がされています。
トランペットの吹奏感や音色に影響するものは他にもベルのテーパーや大きさ、バルブセクションの構造などさまざまな要素が存在しますが、ジャズ向けと呼ばれるトランペットでよく言及されるのは今回書いたところまでが多いのではないでしょうか。
言うまでもないことですが、トランペット選びで最も大事なことはその楽器を実際に吹いてみてどう感じるかということでしょう。
しかし楽器店でちょっと吹いただけの印象なんて後でいくらでも変化します。
ですから楽器選びの時に今回書いた内容を軽く把握しておくとあなたの想定する演奏シーンに向いたスペックなのかどうかという参考になるかと思います。
以前も載せましたが過去の有名なトランペットプレイヤーのマウスピースとトランペットの組み合わせを掲載しているこちらも参考にしてみてください。
この時期は部活やサークルに入ったりして新たにトランペットを買う人が多いでしょうから、今回はずばり「ジャズ向きと呼ばれる」トランペットについて書いてみようと思います。
紛らわしいタイトルで申し訳ありませんが、「ジャズ向きの」トランペットではありません。
「ジャズ向きと呼ばれる」トランペットについてです。
関連1:ジャズトランペットの伝説的存在、Martin Committee
関連2:伝説の陰に隠れた名品 Martin Handcraft Committee
関連3:ジャズミュージシャンから見たトランペットのメーカーについて
ジャズ向きと呼ばれるトランペットの特徴
ノーラッカー
ラウンドクルーク
リバース管
ライトウェイト
ヘビーウェイト(ヒレ付き)
まずは思いつく限り書き出してみました。
以前AOI JAZZでも書きましたが、そもそもジャズと言ったっていろいろあるのですから十把一絡げに「ジャズ向き」と括ってしまうこと自体ナンセンスです。
もし楽器屋さんで「このトランペットはジャズ向きですよ!」と言われたら必ず「どんなジャズ?」と聞き返してみましょう。
ここでは以前の記事と同じように「ジャズ向き」を大きく2つのベクトルに分け、より詳しく考えてみます。
それは「ビッグバンド」と「コンボ」です。
ビッグバンド向けとしては軽めの吹奏感で明るくパリッとした音色が好まれる傾向があります。
上に挙げたものだと「ラウンドクルーク」「リバース管」「ライトウェイト」の3つが当てはまるでしょう。
一方コンボはダークで渋めの音色が好まれる傾向にあります。
この場合は「ノーラッカー」「ヘビーウェイト」が該当するでしょう。
ただしここで書いてあることが全てに当てはまるわけではありません。
コンボでの演奏が多いプレイヤーでもライトウェイトでラウンドクルークのトランペットを吹いているケースはいくらでもありますし、その逆もまた然りです。
この後に出てくるマーティンコミッティだってコンボで使うのに向いているとされていますが決してヘビーウェイトではありません。
ただそれを言っていても話が進みませんから、ここでは少し乱暴ではありますが断定的に語ってしまうことをお許しください。
1.ノーラッカー
ノーラッカーとはトランペットの素材である真鍮の上に何もコーティングをしていないもののことです。
ローブラス、アンラッカーとも呼ばれます。
ノーラッカーの楽器は真鍮の表面にラッカーや銀メッキをされていないため、ダークな音が出ると言われています。
楽器の素材の上に何のコーティングもないためほっておくとどんどん酸化してしまいますが、それが本来の姿だそうです。
しかし演奏が終わったら脂や水分をきちんと拭き取る必要があり、お手入れには少し注意が必要です。
写真のトランペットは借り物のマーティンコミッティ。
いかにもジャズっぽいというか、大変味のある見た目をしています。
完全なノーラッカーではありませんが、バルブセクションはほぼラッカーが剥げてしまっている状態です。
この記事を書くに当たってノーラッカーの楽器について調べてみましたが、「ノーラッカーの楽器を綺麗に酸化させるにはどうすれば良いですか?」というトピックの多いこと多いこと・・・。
そんなこと考える時間があるならその分練習すれば見た目も演奏も勝手にかっこよくなるのに(笑)
2.ラウンドクルーク
チューニング管がスクエアではなく半円形(=ラウンド)をしています。
一般的にはラウンドの方が空気抵抗が少なく、息がスムーズに入ると言われていますが、僕自身同じ条件で吹き比べたことがないので分かりません。
初心者は抵抗がない方が吹きやすいと言われることもありますが、実際のところはケースバイケースです。
3.リバース管
こちらはチューニング管のオスメスが写真のように逆になっているものです。
リバース管であれば流れる空気が管内の段差に当たらないために抵抗感が少ないと言われていますが、僕はこれには懐疑的です。
個人的には管内の段差が原因というよりも、下の写真のようにベルとマウスパイプを繋ぐ支柱の位置が手前に来ることによる変化が大きいのではないかと思います。
実際チューニング管はノーマルのまま支柱の位置だけを手前にずらしたものを吹いたことがありますが、リバース管とほぼ同じような効果を感じました。
通常のものにくらべて支柱が手前に来ることでベルをよりフリーに振動させることができるということは以下のようなメリット、デメリットがあると思います。
メリット
ベルから演奏者側に返ってくる音が増えるため、周囲がうるさい環境(ビッグバンドのホーンセクションの中)や、でも自分の音が聴きやすい。
デメリット
本来ベルより向こうへ飛んでいくはずの振動が少なくなるため、遠達性は劣る(?)
僕個人としては支柱の位置が手前にあった方が自分の音がより聴こえるので好みではあります。
4.ウェイト
ライトウェイトと呼ばれるものの多くは管の厚み自体が薄くなっていたり、支柱の数が少なくなっていたりします。
下の写真は2番管の比較ですが、左右で管の厚みが微妙に異なるのがお分かりでしょうか。
一方ヘビーウェイトモデルでは支柱が多かったり、モネットのようにヒレ状になっているものすらあります。
マウスピースを差し込むレシーバーや管そのものの厚みが全体的に増している場合もあります。
僕もそこまで詳しい方ではないので各パーツごとの変化に関してはあまり言及できません。
ただ全体的にはパーツが多かったり重いものほど吹奏感は重く、音が遠くへ直線的に飛び、音色はダークになります。
逆に軽いものほど吹奏感も軽く、自分へ返って来る音が多く明るい音色になります。
これだけ読むとトランペットの音を遠くへ飛ばすためにはヘビーなものをと思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。
同じ条件で演奏したときに音がより遠くへ飛ぶということは自分に聞こえる音の量が減るということです。
もちろんその違いはわずかですが、演奏しながら自分の音をしっかり把握できないということはトランペットの演奏をする上で不安なものです。
自然な反響の得られない野外ステージなどでPAのセッティングが上手くいかないと死ぬような思いをするのはそのためです(笑)
例えばヘビーウェイトトランペットの先駆けとして知られるモネットではそのデメリットを和らげるために非常に大きなベルやフレンチビードを採用するなど、バランスをとる工夫がされています。
結局最も大事なことは
トランペットの吹奏感や音色に影響するものは他にもベルのテーパーや大きさ、バルブセクションの構造などさまざまな要素が存在しますが、ジャズ向けと呼ばれるトランペットでよく言及されるのは今回書いたところまでが多いのではないでしょうか。
言うまでもないことですが、トランペット選びで最も大事なことはその楽器を実際に吹いてみてどう感じるかということでしょう。
しかし楽器店でちょっと吹いただけの印象なんて後でいくらでも変化します。
ですから楽器選びの時に今回書いた内容を軽く把握しておくとあなたの想定する演奏シーンに向いたスペックなのかどうかという参考になるかと思います。
以前も載せましたが過去の有名なトランペットプレイヤーのマウスピースとトランペットの組み合わせを掲載しているこちらも参考にしてみてください。