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トランペットの演奏とブレス
僕が高校生の頃にご指導いただいた方にユーフォニアム奏者の早川潔先生という方がいらっしゃいます。
早川先生はアメリカでの音楽活動の経験が長く、かのクラウドゴードンにも一時期師事していたという方なのですが、先生はレッスンでよく「しっかりとブレスをしなさい。日本だとプロでも全然できていないことが多いが、そんなプレイヤーは全く音を響かせることができない。大きくブレスをすることは金管楽器を演奏する上での基本である」という内容のことを仰っていました。
飲み込みの悪い僕はこの教えを理解し実践するまでに何年もの歳月を要しましたが、 今になって思うとあの時にブレスの重要性というパズルの重要なピースを頭に仕込んでいただいたおかげで現在の僕があるのだととても感謝しています。
トランペットが上手くならないのはアンブシュアのせいなのか?
トランペットの演奏に悩んでいる方からよく「何がいけないんでしょうか?やっぱアンブシュアですかね?」と尋ねられます。
しかし実際に演奏を見てみるとその中のほとんどの方はブレスが足りていないのです。
もちろん問題点はそれだけではなく人によって様々な問題が併発しているのですが、ブレス以外の問題にしてもブレスが小さすぎることに起因しているものがよく見られます。
こういう例えはどうでしょうか。
今から車でレースをします。
Aチームは一流のメカニックによってしっかりとチューンナップされた状態で、ドライバーも一流です。ただしガソリンはほとんど入っていません。
BチームはAチームと同じ車種ですがノーマルの状態です。ドライバーは初心者。ガソリンは満タン。
この条件下で素直に考えたなら勝つのは言うまでもなくBチームです。
この例でのガソリンがブレス、チューンナップされた状態というのがいわゆる理想的(?)なアンブシュアだったりマウスピースだったりすると言えるでしょう。
ガソリンがなくなってしまえば車は走ることが出来ませんから、いくら良い車であってもレースに勝つことは出来ません。トランペットも同様にいくらアンブシュアやマウスピースなどが理想的なものであったとしても、そもそも息をしっかりと吸っていなければトランペットをまともに演奏することはできません。
車と違うのは、トランペットの場合はブレスが少なくても無理をすればそこそこ吹き続けることができるという点です。
実はこれが曲者で、小さなブレスで演奏する習慣のある人は「上手に器用に無理をして」吹くようになってしまうのです。
具体的にはアンブシュアだったり、体への必要以上の力みだったり・・・。
こうなってしまうと本来トランペットを上達するために行うはずの練習ですら、「トランペットを無理な状態でもどうにか吹くための練習」になってきてしまいます。これは恐るべき時間と労力の無駄と言わざるを得ません。
さらに言うならばこの状態を長く続けてしまうと一度付いた悪い習慣を抜くのに少なくない時間を必要とします。
この状態でも早川先生の言っていたように日本でならプロとしてそこそこの活動ができるくらいにはなるのかもしれません。
しかし常に持久力、音色、音域、そしてコントロール性に問題を抱えたまま演奏を続けることになってしまいますし、少し耳の肥えた聴衆にとってそれは心に響かない演奏として聴こえることでしょう。
そういえば僕自身アメリカにいた頃はブレスに問題を抱えたトランペットの学生は一人も見ませんでした。
息を吸わなければトランペットは吹けません。もっと楽に自由に吹きたいのならもっと吸いましょう。
ブレスを大きくすれば全ての問題が解決する!ということではありません。
しかしブレスを改善するだけで多くの問題を解決することが可能なのは事実です。
ですからとりあえずトランペットを上達したいのならまずはこの1点にフォーカスして普段の練習に取り組んでみましょう。かなりの高確率で何らかの手ごたえを感じることが出来るはずです。
かなりの高確率で「上達しますよ」とは書きませんでした。
ブレスを大きくすることによってそれを実際の上達に結びつけるためにはやはりノウハウが必要です。
「ブレスを大きく」という言葉だけを取っても既に二通りは誤解されがちなケースが存在します。
リラックスした深いブレスの仕方などというのはここで書くまでもなくネット上で見つけることができますが、それを上達に結びつけるためには個々人の状況に合わせた的確なアドバイスが必要なことが多い気がします。
(残念ながらブレスに関する有効なアドバイスができないトランペット講師も日本では多いのですが・・・)
そのアドバイス、もしくは今後どうやって練習すべきかの指針を得るために必要なのがレッスンです。
と、最後に宣伝をはさませてもらいました。まあトランペット教室のブログだし良いでしょう(笑)